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ヒトを喰らう、鬼がいた。
鬼はたいそう美しく、その姿には誰もが目を奪われたという。輝かんばかりの、黄金の髪、同じ色の瞳。この世のものとは思えない美しさに見惚れているうちに、喰われるのだ。大人も、子どもも、女も、男も。
ある日、村人たちは蜂起した。鬼を酒に酔わせて油断させ、それぞれに武器を持ち、火を放ち、鬼を追いつめた。数十人だった鬼は、気が付いたときには一人を残すのみになっていた。
しかし最後の一人になった鬼の反撃は凄絶なものだった。凄まじい腕力で家々を破壊し、木々をなぎ倒し、大地を割った。腕を払うだけで、身動きが取れなくなるほどの風を起こした。
村人たちは恐怖した。たった一人の鬼に、動けなくなった。まさに鬼気迫る様相を呈する鬼に、やがて降参したのは村人のほうだ。鬼を排除しようなどと、自分たちの考えが間違っていた。どうかもう許してほしいと、村人のほうが申し出たのだ。
鬼は答えた。
―――その申し出、受けても良い。ただし。
それから二百年。鬼を鎮めるための生贄は、今もまだ供物として捧げられている。
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